2016/07/27

夏の地球 #7





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女は間を図るのを諦めたようだった。
Gin-jiと共に世界を渡り、極度の緊張を快楽に変えてきた女。
女はGin-jiの兄、Kin-jiに会ったことがないと言った。
そしてどうやら私からKin-jiについての何かを聞きたいらしい。
それは既に袂を分けたGin-jiへの想いに繋がる何かがあるからなのだろうか。

女との会話の中でGin-jiが生きていることは解った。
Gin-jiはそう簡単に死んでしまうような男ではない。
兄のKin-jiが死んでしまったのは、あまりにも純粋すぎたことと、
誰もが驚愕したKin-jiのあの摩訶不思議な力のせいだ。

この妙に勘にさわり入店した薄暗いBarで出会った女。
その女からの言葉でKin-ji、Gin-ji、テツオという懐かしいカードが配られた。
私と女がそれぞれの記憶と感覚と想像において展開しようとしているゲームは
何のだろうか、私は楽しくもありまた憂鬱でもあった。
そして互いに楽しさと憂鬱さのバランスを保っていた間を
どうやら女はもう図らない覚悟を示している。
それはつまり相手の心を探るために気を躱すことを止めたということだ。


「今はただ、金次が死んだわけを知りたいのよ」

ため息混じりにそう呟いた女の目は遠く、
相変わらず顔全体に「恥」が強くへばりついていたが、
その次の微笑みには素直さが滲み出ていた。
もう探り合いは止めましょう、という想いを
微笑みがスマートに表現していた。











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