2009/06/08

Sham e Qalandar -[Sain Armani]













*音楽配信サイト「VOON」サービス終了のため
 SoudCloudより配信 (2013/10/15)




今回、音楽配信サイト「VOON」より
配信する曲は「Sham e Qalandar」。
歌っているのはパキスタン・スーフィーの砂漠の巡礼で
出会った巡礼者の一人、Sain Armani。
音源は2005年の巡礼における録音である。



パキスタンで最も大きなスーフィーの命日祭の後で
ラールバーグと呼ばれる広場から
聖者が砂漠の中に起こした奇跡の場所を
歩き巡る旅が始まる。
いくつかのOasisを経由して進むその巡礼で
私はアルマーニ・サインに出会った。
私は彼の本当の名前を知らない。
アルマーニ・サインと呼んでいるのは
ただ彼が胸に「Armani」と書かれた
赤いボロボロのトレーナーを着ていたからだ。

アルマーニ・サインは決して若くない。
見かけに60歳は過ぎていただろう。
巡礼するスーフィー達の多くは若くはなかった。
若さと引き換えにした精神力が
過酷な状況で歩き続けることを可能にしていた。
それは信じられない光景だった。
人間として以外の
何か別の不思議な力が
備わっているようにしか思えなかった。
それは生と死の狭間を行く者に宿る
不思議な力なのだろうか。

更にアルマーニ・サインには特別な力があった。
それは彼の歌に現れていた。
嗄れたその声で歌い、踊る。
時折、クゥワ・クゥワ!と
意味不明な言葉を漏らす。
歩く先々でアルマーニ・サインは歌い、踊り、
いつも誰からか
何かを分けてもらっていた。
食べ物であったり、衣類であったり、お金であったり。
しかしそれらをまた誰かに分けてしまう、
というより、あげてしまうのだ。
そしてまた歌い、踊り出す。

ジュレ・ジュレ・ラール・カランダル
マスト・カランダル・ジュレ
ジュレ・ラール
メレ・パース
ジュレ・ラール
サプケ・メレ・パース

揺れる焚火に写し出された
アルマーニ・サインの目には涙が溢れていた。
いつのまにかその歌を聴きながら私も泣いたことがある。
もの凄い力に包み込まれた感覚だった。

それが感動であることに気付いた時、
感動は思考の先になく、
常に感触の先にあるということにも気付いた。

いつの日かまた会いたいと願う一人。
会える場所はただ一つ、地球C。


アナタに会える場所
太鼓が鳴り響いていて
溢れる世捨人が
遠く彼方の砂漠から
山を越え
ただひたすら己と向き合い
歩き続けた先にある
緑豊かなOasis

アナタは涙ながらに歌う

過酷なその道程の果てにある
心の輝きを
そっと想い出して

時間の海で見かけた生と死を
我がことのように
そっと想い出して

夢を持たず行きて行くことを決めた
若き日の己の青さを
そっと想い出して

生きてゆくことにおいて
すべてを神に預けたことを
そっと想い出して


アナタの嗄れた声が
今もワタシの胸を熱くする
アナタの生き方が
明日のワタシを支えている

ジュレラール
明日の我が身を
重ね合わせて










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