2012/03/17

Only just now!
















朝まで呑んで
何とか地元の駅に着いたものの
しばらく駅構内で眠り、
駅員に揺り起こされ
立ち上がり歩き始め地上に出ると
強烈に眩しい光が溢れていた。
暖かい朝だった、
だから私は自分の首に巻かれた
見知らぬマフラーにすぐに気づいた。

朝まで呑んだ暮れた誰かが巻いてくれたのか、
それとも乗客の誰かが巻いてくれたのだろうか。
とにかく店を出てから
駅で駅員に起こされるまでの
わずかな記憶のピースを掻き集めていると
ニコニコ笑ったおっちゃんが話しかけてきた。

耳を傾けたが
何を言ってるのか理解することができなかった。
おっちゃんの言葉は
言葉を突き抜けた先にある
電波系の新たな波だったからだ。
理解できず理解しようともせず
ただただうなずいていると
何となく交信できるような気がしてきた。
酔っぱらいの特権のようなものだ。

10分も経つと何故か二人で笑い合っている。
それも電波系と酔っぱらいの特権に違いない。

私の首に巻かれたマフラーを引っ張りながら
おっちゃんが大はしゃぎしてるから
私はおっちゃんの首にマフラーを巻いてやった。
するとおっちゃんは急にキョトンとした顔で
私のことを見つめてきた。
私はおっちゃんの肩を叩きながら
プレゼントするよ、と心の中で呟いた。
そうしたらおっちゃんは
また突き抜けた言葉を発しながら
急に愉快に笑い始めた。


おっちゃんと別れて家に帰り
それまでのテンションのままヘラヘラしていると
rabiyaが機嫌を損ね怒りだしたから
私はカメラを手に再び街に繰り出した。

近所の朝を数枚撮って帰ろうかと想ってはいたが
あまりに早く帰るのも何だったので
繁華街に向かって歩いてみたら
なんとやっぱり再会したんだ、
さっきのおっちゃんと。

おっちゃんは嬉しそうに
マフラーを首に巻いたり外したり
眺めてみたりを繰り返していた。

今日の写真はその時の一コマ。

私に気づいていなかったおっちゃんに
話しかけようかどうか一瞬迷ったが
実際に話しかけてみると
なんとおっちゃんは
私のことなど全く覚えていなかったのだ。

また二人で笑った。
それでいい、そう想った。
おっちゃんに過去はないのだ。

今しかないのだ。

久しぶりにタフなおっちゃんを見た。
まるでパキスタンの
砂漠の巡礼のような話だ。










0 件のコメント :

コメントを投稿