2009/01/03

Lal Meri Pat -Abida Parveen











少し前の掲載でパキスタンのロックグループ、
Junoonの歌う「Lal Meri Pat」を紹介したが、
今回は同じくパキスタンのスーフィー・フォークシンガー
Abida Parveenの歌う「Lal Meri Pat」。

私は三年前にラホールで彼女に会ったことがある。
PCホテルで行われた音楽プログラムに
ドールワラーの弟子として会場入りした時のことだ。
舞台裏の楽屋で写真を撮らせてもらったり、自己紹介したことを想い出す。
私がその年も聖者Lal Shahbaz Qalandarの命日祭に
出向いたことを話すと喜んでくれた。

彼女の出身はシンド州のラルカナ。
物静かで気さくな大物ミュージシャンだった。





パキスタンのスーフィーにおいて
聖者Lal Shahbaz Qalandarを抜きにその世界を語ることはできない。

聖者の特別な力を肖ろうと聖者廟に集まる
土着的な聖者崇拝の盛んなパキスタンでは
その儀式、祭り、聖者の命日祭において誰もが
聖者Lal Shahbaz Qalandarの名を口にする。
祈りを雄叫びにする者、聖者の歌を口ずさむ者、
様々な形で聖者Lal Shahbaz Qalandarは今も人々の心にいる。

聖者Lal Shahbaz Qalandarは文献において
1171年、アフガニスタンに生まれ、
後に神秘体験を得るための修行者となった、とされる。
パキスタン南部シンド州、セワンシャリフという村に
聖者Lal Shahbaz Qalandarの聖者廟がある。
1356年に建造されたその聖者廟を目指し、
命日祭にはパキスタン全土より50万人もの人々が訪れる。

私も2003年〜2008年の間に5回、
聖者Lal Shahbaz Qalandarの命日祭に出向き、
昨年は命日祭の後に聖者Lal Shahbaz Qalandarが巡ったとされる
シンド州からバローチスタン州にまたがる砂漠の路を
スーフィー・マランゴ(求道者)達と巡礼した。
砂漠の中に忽然と現れるOasisは
聖者Lal Shahbaz Qalandarが作り上げた奇跡とされ、
温泉が沸き出している場所なども複数あった。
砂漠のど真ん中にだ。

生死の境を彷徨うような過酷な巡礼の最中、
巡礼者は乾いた喉でこの歌を唄い、勇気を奮い起こした。

そして巡礼の最終地、Shah Nooraniの祭りでも
様々な歌が流れていたが、やはりこの曲「Lal Meri Pat」が始まると
それまでの空気が急に熱を帯びた。


パキスタン南部の文化、風習、宗教、及び宗教音楽を研究し、
「聖者の宮廷楽士考」を主催する和光大学の村山和之先生によれば、
「Lal Meri Pat」は聖者Lal Shahbaz Qalandarを歌い込んだ
代表的宗教歌謡であると共に、その歌が秘めている物語の範疇は
インダス川の流れに繋がる広大な地域の土着的信仰要素、言語、風習が
シンクロしているという。


詳しくは村山先生の研究レポート
「パキスタン南部の神と聖者:その祈りと歌のかたち」参照










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