2012/09/15

デリーのチャイ屋







チャイ屋へ向かう。チャイ屋と言っても屋台だ。
しかしながらもう15年は通っている。
15年も同じ場所で屋台で同じ人間が商売しているのを
パハールガンジで他に見たことがない。
以前はヒンドゥーサドゥだった親父が始めたチャイ屋台、
そして今や親父はムスリムだ。
そんな親父のチャイは日によっては味にブレもあるが、
なかなかの評判で、いつも数人がたむろしている。
4年前に私がパキスタンスーフィーの砂漠の巡礼を終え、
パキスタンからデリーに帰って来た翌日の朝、日本に帰国するために
空港へ向かう寸前の故・野上郁弥とも、
このチャイ屋台で再会し一緒にチャイを啜ったことがある。

このチャイ屋台に通うようになってから
親父と私の中で育んでいる戯れごとがある。
rabiyaは面白がってその戯れごとを
「デリー チャイ屋問題」などと言って笑っている。

初めてこのチャイ屋に来た時、
親父は私が尋ねても値段を教えてくれず、
お前が値を決めて払ってくれればいい、と言った。
インドでは毎日飲むチャイではあるが、
店の違いや一杯の量の違いで値段にも若干の差異があり、
親父はいくらでもいいからなどと言ったが、
値段を決めるのは少し面倒な気分だったので、
結局、私は私を親父の屋台に連れてきたアメリカ人の旅人に、
彼本人が決めた彼だけの値段を問い質し、当時それに習うようにした。

毎年ではないが、少しずつチャイの値段も上がる中、
その度に「デリー チャイ屋問題」が訪れる。
以前からそうだったが、
6年前に大病を患った後親父は
さらに多くの貧しい人たちにチャイを振舞うようになった。
そんな親父の人柄も含めて好きなチャイだから
今や確実に多めに支払っているつもりだが、そのつもりが試される
戯れごと である。

これまでもこれからも、
その時々で久しぶりにチャイ屋に出向いた際の
最初の勘定を親父は絶対に払わせない。
それが戯れごとのはじまりなのだ。








2 件のコメント :

  1. とても魅力的な記事でした!!
    また遊びに来ます!!
    ありがとうございます。。

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  2. >履歴書さん
    コメントありがとうございます。
    是非、遊びに来て下さい。
    気になった記事・写真があったら、またコメントして下さい。

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