2012/08/29

おれ、ねこ #7














真夜中の歩道橋の階段で出逢った猫は
長い間じっと私のことを見ていた。
相手が見ているので私も同じように見ていた。
逃げる様子が全くなかったのでファインダーを覗いてみる。
聴こえてくるようだった。

おれ、ねこ
おれ、ねこ
ここ、おれのうち
ここ、おれのうち

しばらく歩道橋通路を撮影していて
視界の隅にふと、ホウキを持った女の人の動作が入ってきた。
見ると掃除をしている。
その女の人の足下には3匹のおれ、ねこ。
聴こえてくるようだった。

おれ、ねこ
これ、うちのやつ
こいつ、ごはんをくれる
こいつ、あそんでくれる

おれ、ねこだから
こいつのことばわからない
おれ、ねこだけど
こいつのきもちなぜかよくわかる

おれ、ねこ
おれ、ねこ
おれ、ねこ
おれ、ねこ


女の人はわざわざきれいに掃除をしてから、
3匹のおれ、ねこにごはんをあげはじめた。
きっとごはんが終わってからまた掃除をして帰るのだろう。
そしていつも同じ頃に来ているのだろう。

だからその刻だからこそ
私は最初のおれ、ねこに見られ続けたに違いない。












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